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一家に一台、車椅子! 人にやさしい街づくりセミナーin田原に参加して思ったこと

 先日土曜日に田原市で開催された「人にやさしい街づくり地域セミナー『出掛けたくなる街in田原』」に参加した。当日は冒頭の挨拶や説明の後、参加者が6つのグループに分かれて、それぞれ別々に定められたコースに従って街に出掛け、課題や改善点等を点検するタウンウォッチングから始まった。
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 私が加わったチームでは最初に11月末に完成したばかりの三河田原駅まで歩き、駅の内外を歩き回った。各チームには車椅子1台と高齢者体験装具1式が渡され、交代で車椅子や高齢者体験をした。これまでもこれらの体験をしたことはあったが、ここまで長い時間使用したことはなく、感じるところが多くあった。
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 が、まずは安藤忠雄設計で改築オープンした三河田原駅について。三河田原駅は豊橋鉄道渥美線の終着駅のため、一般の駅舎のように線路に平行するのではなく、線路とプラットホームを遮るように直交して配置されている。安藤忠雄と言えば鉄筋コンクリート造の打放し仕上げというイメージだが、本駅舎は鉄骨造2階建て。線路とプラットホームを受け止めるような形の半円形の平面で、外側のアール状の外壁はこげ茶色の縦ルーバーで覆われて、一見木質のシックな感じになっている。中央に改札ホールがあり、その先にはカラフルにカラーリングされた電車が見える。
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 改札ホールの左は駅務室、右が待合室を兼ねた市の交流スペースになっている。床には渥美半島の地図が描かれ、大型液晶ディスプレイ、自販機等が設置され、観光パネルやパンフレットが置かれている。またホールから2階へ上がる階段があり、2階ホールには椅子とテーブルが5組ほど配備されていた。交流スペースからは改札口側の壁面から駅前広場に出られるようになっており、楕円形でスモークガラスに覆われたおしゃれなデザインの多目的トイレと、バス停や待合室がある環状の上屋がロータリーを囲む駅前広場となっている。
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 交代で車椅子に乗り、駅の内外、駅前広場などを移動してみる。狭くて通り難い出入り口もあったが、原則バリアフリーとなっており、大きな不満はない。と思ったが、あとでバリアフリー点検のワークショップを行ったら、駅舎に対する指摘が一番多かった。2階へ行くエレベータがない。トイレの男女表示が逆で間違いやすい。引き手が英語表示でかつ文字位置が不適切などなど。みんなよく見ている。
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 我々のグループは三河田原駅から市が運行するぐるりんバスに乗って田原ショッピングセンター・パオに移動した。バスを降りたらまた車椅子に乗せてもらった。入口の急なスロープ、狭い店内。でも次第に車椅子に慣れてくると、意外と操作性もよく快適だ。対面式販売のお店で揚げ物を買ったら、店員さんが親切に身体を伸ばして商品とお釣りを渡してくれる。みんな車椅子に対しては親切だ。混み合ったところへはさすがに遠慮して近寄らなかったが、狭いながらもけっこうどこでも通過でき、最後にレジで精算支払い。気持ちよく買物ができた。
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 次は隣にある田原文化会館を通って中央図書館に入る。田原市中央図書館は平成14年にオープンした。もうすぐ開設後10年になるが、設計段階から市民グループが積極的に関わり、市民協働で設計を進めた施設で、閲覧室の各所が外部スペースに開かれており、光と緑にあふれた非常に魅力的で快適な図書館だ。設計は、和(やまと)設計事務所。グループのみんなは多目的トイレで車椅子体験などをしていたが、私は専らカメラを片手に図書館内を歩き回っていた。
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 図書館を出て、次は昼食場所の中華レストランに向かう。途中、右手に介護老人保健施設やグループホーム等から成る「あつみの郷」、市営の特定公共賃貸住宅・シルバーハウジングに店舗が併設された福祉の里住宅「セントラルコート築出」、児童福祉センター、若者向け市営住宅「すまいるコート築出」などが並ぶ。積極的な田原市の住宅施策等はこれまでも何度か見学をしたことがある。詳しくは「住宅施策を考える:田原市の中心市街地活性化への取り組み」をご覧ください。
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 昼食後、店内で高齢者体験装具を付けて、出発点の田原福祉センターへ向かった。背中や手足に装着するおもりは気にならないが、白内障体感ゴーグルが行動を制約する。視野が狭く周りの人間や障害物が全く目に入らない。信号もわざわざ首を上げないと見えないし、交差点を曲がってくる車にも気が付かない。すると次第に周囲に注意を向けるのが面倒くさくなってくる。高齢者がわがままになるのはこういうことなのかなと思う。
 田原福祉センターに戻ってからは、グループ毎に点検結果を模造紙に書き込み、改善案等も考えて発表を行った。他のグループは三河田原駅以外には別の商業施設や公共施設、駅舎へ行っているが、先に書いたとおり、意外にも三河田原駅に対する意見が多かった。新しいからなおのこと気になるのかも。しかし細かい改善はあるとしても、何でも施設で対応するのではなく、利用者相互が思いやりをもって対応することで乗り越えられるバリアは多い。車椅子などを利用して普段とは違う感覚で街を体験することは、バリアフリーな街づくりを進める上で大いに意味がある。
 と書いてから何だが、車椅子は実に快適だった。もちろん最初は向きを変える際など戸惑うこともあったが、しばらく乗っていると次第に思うような操作が可能になる。長年、車椅子を利用されている方にとっては、手足のように扱うことも可能だろう。最近は電動車椅子を利用している人も多い。「今回、使用したような自走式車椅子はどんな方が使うんですか」と尋ねたら、「自動車を運転される方は電動車椅子は利用できないので、自走式の車椅子を利用します」とのこと。ということは、駐車場から先をバリアフリーにすれば、施設内はかなり快適に利用できそうだ。いや、今回のようにけっこう長い距離を歩くことを思えば、車椅子の方が断然楽だ。私のように中年を過ぎると、普段は健康とは言え、長い時間立ったり歩いたりすると、膝が痛くなったり、腰が痛くなったりする。身体障害者だけでなく、一般の人々も少し疲れたときや身体の不具合に備えて、一家に一台、車椅子を常備しておけばけっこう便利ではないか。
 そう思って「車椅子はいくら位するものなんですか」と訊いてみた。すると「介護ショップでですか」と問い返された。そういえば、ホームセンターで並んでいるところを見たことがないなあ。要介護認定を受けた人は1割負担で購入できるから、けっこう高級な車椅子を購入するらしい。一般には入手できないのだろうかと価格.comで検索すると、最低価格15,000円くらいから各種並んでいる。なあんだ、大した金額ではない。ベビーカーを利用したり、一時的に松葉杖生活をすると街のバリアーが気になるように、障害者がいない家庭でも車椅子をもっと日常的に利用するようになれば、街の姿も大きく変わるのではないか。これはやっぱり「一家に一台、車椅子」運動でも始めたらどうか(冗談です)。