戸建住宅団地の居住環境評価

 国土交通省(土地・建設産業局)では平成21年度に「戸建て住宅団地の居住環境評価に関するガイドライン」を策定・公表している。この内容を詳しく聞き、意見交換をする機会があったので報告する。

 ガイドラインは、住宅単体の性能表示制度はあるが住宅団地の性能表示制度はない、しかし住宅単体では測れない性能がある、という問題意識の下、1団地の居住環境を評価する仕組みを提案したものである。住宅の性能表示制度はあるのだから、住宅単体については評価対象外、住宅地開発事業のツールとして使うという意図から一体開発される住宅団地を評価対象とし、宅地開発と一体で整備された共用施設は対象とするが、そうでない施設については近接(評価対象区域内の一番遠い位置から600m以内)のもの以外は評価の対象としない。また、駅や公共・公益施設への距離など立地条件に関わる部分については、土地価格に反映されているとして評価対象外としている。逆に言うと、地価に反映されない居住環境について評価することで、住宅団地の差別化や比較を行うことができるようにすることを目的としている。

 評価結果については、CASBEEのように一つの数値指標で表現するのではなく、「安全」「生活」「街なみ」「エリアマネジメント」の4つの区分の中にさらに「防犯」「交通」「防災」/「公園」「利便施設」「バリアフリー」/「ゆとり」「緑」「景観」/「街並みルール」「管理体制」「地球にやさしい」と3つずつの評価項目があり、それぞれ「居住環境配慮している/されていない」のいずれかの評価がされる仕組みになっている。ビジュアル的には、評価できる項目がカラー表示され、評価できない項目は白塗りになっている。

 各項目は基礎的には計91の小項目について「適合している/していない」の評価を積み上げ、12の中項目ごとに基準値を設定。適合している小項目の数を基準値と比較して、中項目の評価を行う仕組みになっている。ちなみに「交通」の項目は、団地内道路の幅員や歩車分離の状況等が評価項目となっている。また、基準値はインターネットでピックアップしたカタログから判断して採点し、平均点をベースに設定している(ただしエリアマネジメントについては政策誘導的に設定)。

 パブリックコメントを経て公開されたガイドラインは現在、国土交通省のHPに掲載されているが、実際どれくらい利用されているかはっきりしたことはわからない。プレハブメーカーでは営業マンのツールとして役に立つという意見もあるようだし、国内で良質な住宅団地開発を多く手掛けている住宅生産振興財団では、団地をガイドラインに基づき分類し「30年のあゆみ」として刊行したなどの事例があるようだ。

 国の住生活基本計画では、参考資料として最低居住面積水準などと並んで、居住環境水準を記述しているが、内容は指標項目を挙げるのみで、具体的な数値が記載されていない。本ガイドラインはこれに代わる具体的な指標として活用できるかもしれない。また、地区計画などを検討する際に、建築基準法に定める規制項目と数値に囚われがちだが、このガイドラインを利用することで、具体的な地区イメージを持って地区計画を検討することができるようになる可能性もある。

 参加者からは、事業者が自ら評価するのではなく、消費者や住民が住宅購入の際に利用するツールとして使えるのではないかという意見があった。ネットで評価したい項目を入力するとお勧め団地が紹介される仕組みなどのアイデアも面白い。リクルートなどの住宅情報企業での利用も考えられるだろう。また既存住宅地の評価に使用することはどうだろうか。市町村全域で評価をすることで、課題が数値的に見えてくるかもしれない。

 参加者からは、評価項目の重み付けの可能性や基準値の妥当性、経年的な変化への対応など様々な意見が出された。それは逆に言えば、非常に興味をそそる取り組みだったということでもある。国土交通省の中でも土地・建設産業局の取り組みということで、住宅局からの視線は冷たかったという話もあるが、うまく民間活用を促すことで居住環境を評価する機運を高めていくことが必要ではないだろうか。楽しい話を聞かせてもらった。