せんだいメディアテーク

Dsc02626 仙台へ行ったついでに一度は見てみたかった「せんだいメディアテーク」に寄ってきた。仙台駅から地下鉄で2駅。県庁や市役所などもある勾当台公園駅で降りて、定禅寺通りを歩くこと5分。通りに面して北側に大きな太陽模様の外壁が目立つ建物がある。宮城県民会館。宮城県らしくネーミングライツに取組み、今は「東京エレクトロンホール宮城」と呼ぶ。設計は山下寿郎で1964年の完成。曲線で受ける打ち放しのバルコニーなど、昭和の時代を髣髴とさせるデザインだ。

 県民会館を通り過ぎ、ガソリンスタンドの向こう側にガラス張りの建物が見えてくる。「せんだいメディアテーク」だ。想像していたよりも小柄で周辺に溶け込んでいる。通りの反対側から見ると、けやき並木に隠れてよく見えないくらいだ。入口の表示もおとなしい。ガラス越しに特徴的なチューブ状の柱が並ぶ脇にさりげなくエントランスの風除室が設置されている。

 入って右手にショップ、その奥にカフェがある。通り沿いにはベンチが設えられ、ガラス越しに定禅寺通りを見ながら、多くの人が陽だまりに憩っている。案内カウンターの奥にチューブ柱に囲まれたエレベーターとエスカレーターがある。まずはエスカレーターで2階へ。踊り場でいったん折り返してエスカレーターを乗り継ぎ、2階ライブラリーへ向かう。

Dsc02614 低くうねる腰壁に囲まれた中に児童書コーナーがあり、その外側は新聞雑誌や映像音響ライブラリー、そして通り沿いには被災復旧パネルが展示されていた。明るい中に閲覧用ソファが多く配せられている。ただし、リノリウムの床は照明や外光を反射して室内に明るさをもたらしているが、歩くとキュッキュッという音が気になる。

 エスカレーターで3階に上がる。3階ライブラリーのエスカレーター周りは雑誌のバックナンバーやテーマ図書コーナーとなっており、郷土誌や被災・復興関係の図書が並べられていた。北側壁沿いに図書カウンターがあって、貸出手続きの来場者が並んでいる。またカウンター横の階段を上がると、中2階形式の4階があって、参考資料等が並べられている。一般図書は3階フロアの中央に書架があるが、思ったほど広くない。そもそもせんだいメディアテーク自体が私が想像していた以上にこじんまりとした施設だ。そして通りに面して閲覧用ベンチ。

 南東角の柱は階段になっていて昇降ができる。5階・6階のギャラリーが展示入替作業中で立ち入ることができなかったので、階段を登りながら見学。ギャラリーは基本的にフロアがあるのみだが、階段の柱や梁に書かれた箴言が面白い。「ところが、この階段のみが、新しいもの決定的なもの―つまり、これらの建築物の与える空間感覚のことであるが―を十全に認識させてくれるのだ。Benjamin 」うーん? 階段ですら、意味のある空間への意図を忍ばせる。

Dsc02619 そして7階スタジオフロアーには半透明のうねる壁に囲まれて会議室やスタジオシアター、管理部門等が仕込まれ、周囲は雰囲気の違ういくつものゾーンに分かれている。階段室から出たコーナーには黒板とチョークのイメージのオープンスクエア「考えるテーブル」のコーナーがあった。その他のコーナーも特にイベントは開催されておらず、テーブルで作業する若者が散見される程度だった。

 帰りはエレベーターで降りる。ちなみにエスカレーター・エレベーター周りの各階入り口付近に置かれた各階案内は立体模型になっていて面白い。ちょうどお昼時でカフェで昼食をとる。ランチはカウンターで注文すると後はテーブルまで運んでくれる。明るくファッショナブルな雰囲気でいつまでもいたい気分。平日は並ぶ人もなくちょうどいい規模だが、休日はどうなってしまうのか、施設全体の規模も含めて少し気になった。

 案内カウンターに「ようこそ杜王町へ」と書かれたパンフレットが置かれていた。「ジョジョの奇妙な冒険」の作者・荒木飛呂彦仙台市出身。仙台は「S市杜王町」のモデルなのだそうだ。作中でモデルにした施設等を案内するガイドマップが配布されていた。やるな、仙台市

Dsc02623 せんだいメディアテーク東日本大震災で被災し、しばらく閉館していた。ちょうど3月11日は、卒業設計日本一決定戦「せんだいデザインリーグ2011」の最終日だった。地震のため天井が落下し、模型などの展示物が破損する被害が生じた。このことは建築系学生の間ではけっこう話題になったようだ。しかし私が来訪したこの日には何事もなかったかのように多くの来場者を集め、カウンターには今年のせんだいデザインリーグ2013のチラシが置かれていた。今年もまた盛大に開催されるだろう。素直にそのことを喜びたい。明るく希望に満ちた建物はこれからの仙台に希望を照らしている。

●マイフォト 「せんだいメディアテーク」