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東日本大震災への住宅行政の対応と平時の備え ~ 仮設住宅中心を改め、仮設避難施設を供給し恒久住宅対策に重点を移すべき

 先日開催された公共住宅部会は意見交換の後半で刺激的な提案が飛び出し、活気と興奮に満ちた研究会となった。基調報告は中部地方整備局の宮森住宅整備課長。ブログ記事と同じタイトルで1時間以上にわたり、東日本大震災への住宅行政の対応と自ら岩手県で応急仮設住宅建設の派遣支援に行った際の経験、そして現在進めている、来る広域巨大災害に備えた中部地方整備局等での数々の取組について、熱心かつ詳細に報告をいただいた。

 東日本大震災の発生に伴い、発災からわずか15分後には国交省住宅生産課からプレハブ建築協会へ生産・準備開始の要請を行っている。その後、プレ協を中心に5万3千戸余りの応急仮設住宅が建設されたことは周知のとおりである。また公営住宅等の提供や民間賃貸住宅を活用したみなし仮設住宅の借り上げも行われ、現在12万世帯以上の方がこれらの住宅に入居されている。ちなみに被災者向けに住宅情報を提供するコールセンターが名古屋市内に設けられ、中部地方整備局からも1名が常駐し支援したとのことである。

 応急仮設住宅の建設については、当初供給が遅れたのは供給体制の問題と用地確保が困難だったことが大きい。供給については、現在ほとんどの都道府県でプレハブ建築協会と協定を結んでいるが、量的に足らず、また被災地の住宅事業者活用の要望もあって、被災各県では、地元住宅事業者を公募・選定し、建設を行った。居住性の面では木造仮設住宅やプレ協の中でも住宅部会(ハウスメーカー、通常は規格部会:現場事務所等)の住宅の方が優れているが、供給力・対応力(窓口も一元化)ではプレ協規格部会の方が圧倒的に優れており、うまく組み合わせることの必要性を述べていた。

 また、一部では3階建てや輸入資材を活用した住宅もあった。輸入資材については、各国から申し出はあったが、各県ではそこまで対応できる状況になく、国交省対応としたが結局うまくマッチングできなかった。

 最大の課題は用地の確保で、被災各県も事前に仮設住宅建設候補地のリスト化はされていたが、実際には使用できなくなった土地や他の利用に回された土地などもあり、また造成が必要な土地も多いなど、課題が多かった。用地確保が困難な市町村で他市町村に建設を要請せざるを得ない状況も多くあったが、人口流出につながるため、市町村外への仮設住宅建設は避けたい意向がある。そもそも用地の借上げや入居募集・管理を誰がやるのかも明確になっていない。みなし仮設住宅の県外移住についても同様で、今後こうした県域・市町村域を越える供給にいかに対応するかは大きな課題の一つだ。

 現在、現地では災害公営住宅の建設が佳境に入っているが、国では災害公営の入居資格要件の緩和(被災後3年→10年)や譲渡処分要件の緩和(1/4→1/6)などの特例措置を講じている。岩手県で5300戸、宮城県で15000戸の供給計画が公表されているが(福島県は未定)、まだまだこれからの課題も多い。特にどれだけの戸数をどの事業主体が供給すべきかについては、今後の人口減少等を考えると、将来の大量の空家発生にもつながりかねず、各県相当に苦労している状況があるようだ。  

 国交省では被災直後から約4ヶ月間、各県へ技術支援要員の派遣を行った。中部地方整備局では宮森課長自身が5月中旬から1週間強、岩手県庁へ派遣され支援業務に携わっている。当時は「お盆までに全員入居」という首相表明が発せられた頃だが、用地確保がままならず発注ができないという状況の中で、建設状況の把握と国への報告、プレ協岩手県本部との情報交換、その他各種問い合わせ対応や情報提供を行った。例えば、国では仮設住宅の建設実績や見通しが重要な情報だが、各県にとっては現場対応で戸数計上などは後回しになりがち。また他県の対応状況を国交省職員相互で連絡を取り合い情報提供したことも各県の対応に大きな支援となったようだ。

 応急仮設住宅については災害救助法に基づく救助として厚労省所管であり、厚労省からガイドラインが示されているが、今回の経験を元に国交省でも都道府県向けの応急仮設住宅建設必携(中間とりまとめ)が作成され公表された。

 中部地方整備局でも、「地震・津波災害に強いまちづくり検討委員会」の設置や「中部ブロック災害時住宅支援に係る連絡調整会議」の開催、「広域巨大災害に備えた仮設期の住まいづくり検討調査」などの取組が進められている。特に「仮設期の住まいづくり検討調査」は市町村向けの「仮設期の住まいづくりガイドライン(仮称)」を作成しようとするもので、仮設住宅の建設は県が担当するとされている中で、市町村の役割を明確にし、市町村の平時からの取組を促す重要なガイドラインとなると思われる。今後に期待したい。

 以上の報告を受けた後、自由に質疑応答や意見交換を行った。まず、愛知県の状況はどうなっているかということで、同席した県職員から仮設住宅建設マニュアルの見直しや全国木造建設事業協会などとの新たな協定締結等の報告をいただいた。

 木造仮設住宅の建設についての関心も高かったが、プレハブ住宅の長所・短所などそれぞれの特徴を生かした対応が必要なことについては、参加者も理解したのではないか。プレハブ業者からは、「断熱材等の規格は遜色なく、外観イメージから居住性が心理的にマイナス評価を受けている傾向がある」という声も聞かれたという報告もあった。

 復興まちづくりについての意見もあったが、これは現在進みつつある問題であり、これから検証が行われるものと思われる。復興に関しては、現在、各県で災害公営住宅の建設が急ピッチで進められている。しかし、用地の確保の問題、県・市町村のどちらが主体となるか、買取や借上方式の活用、そもそもどれだけ建設すべきかなど課題が多い。さらに政治的な思惑も絡んで、なかなか簡単には整理できないし、何が正解かもわからない。

 私などは新たに災害公営住宅を建設するのではなく、みなし仮設として借り上げている民間賃貸住宅を借上公営住宅にすればと単純に考えるが、地域外のみなし仮設へ避難している人も多く、市町村の復興という観点からまちの将来像をいかに描くかで災害公営住宅の位置付けも変わってくる。

 みなし公営住宅については、2年後の対応をどうするのか(家賃補助の停止等)、今回は民賃避難者を後追いで追認し借上げ対象としていったが今後も同様の対応をするのか、それとも今後は借り上げ後に公募する形を取るのかなど依然未定のままだ。静岡市などではみなし公営の事前登録制度を立ち上げ募集しているが、実際の被災時に有効なのかどうかも定かでない。

 避難所での高齢者等の災害弱者の生活環境の問題や、仮設住宅移行後の生活支援の問題を指摘する意見もあった。また、旅館等の施設をもっと積極的に利用すべきだという意見も出た。しかしこれらは厚労省所管ということもあり、住宅行政側の対応は難しい面が多い。コミュニティ入居(グループ募集)の事例もあるが、応募は少なかった。むしろ入居者の地域を限定した宮古市の事例の方が効果的だったようだ。

 仮設住宅は厚労省規則では戸当たり240万円程度が基準となっているが、実際には500万円程度の費用がかかっている。居住性も相当程度確保されており、恒久住宅として使用できるよう二戸一改善が容易な仕様にするなどの動きもある。一方で恒久化が困難な敷地に建設された住宅も多く、どの程度の仕様にすべきかも大きな問題の一つだ。実際に仮設住宅を建設する都道府県の担当者からは品質・性能が高すぎるのではないかという意見も多い。

 私も日頃から仮設住宅はもっと簡易なものとし、恒久住宅対策に力を入れるべきと考えているが、先日の研究会でそれを口にしたところ、「いっそのこと、仮設“住宅”ではなく、仮設“避難施設”にすべきだ」という意見が出た。設備は共同炊事場・共同便所等とし、部屋も1室程度の尞・寄宿舎のような避難施設を早期に供給することで、劣悪な環境の避難所生活からの早期脱出を可能とする。共同生活型の施設にすることで高齢者等の生活弱者の問題やコミュニティ問題へも対応が可能になるし、用地も仮設住宅に比べれば少なくて済む。そして早期に復興住宅の建設やまちづくりの始動を促す効果が期待できる。また、仮設住宅に過大な費用がかかっていることを思えば、恒久住宅対策を住宅支援一時金等とすることで、費用的にも節約できるはずだ、という提案だ。

 被災後の住まい復興のプロセスが、現在は「避難所」「仮設住宅」「災害復興公営住宅・自力恒久住宅」という筋道で考えられているが、「仮設住宅」を「避難施設」と置き換えることで、また違う住まい復興のプロセスが見えてくる。来る東海・東南海・南海地震の際には東日本大震災以上に大きな住宅被害が予想される。100万戸規模の被災に対して現在のシステムで対応できるのかという意見も聞かれた。たぶん相当に混乱した末に、現在想定しているのとは違う対応がなされ、また新たな方式が生まれるのだろうが、事前に準備できればそれに越したことはない。より合理的かつ的確な住まい復興プロセスを考えておく必要がある。