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UR鳴子団地の再生と高齢者支援

Dsc01892 UR(都市再生機構)では平成19年末に「UR賃貸住宅ストック再生・再編方針」を決定し、全国に約76万戸あるUR賃貸住宅の再生・再編を進めることとしている。中部支社管内にも約6万戸弱のUR賃貸住宅があるが、このうち約1万戸については団地再生や用途転換、土地所有者等への譲渡等を行うこととしている。今回訪問した鳴子団地は、UR中部支社が再生事業を進める団地の一つだ。

 UR鳴子団地は昭和37~39年度に開発された管理戸数2,196戸の大団地。そのほとんどはRC造4・5階建てのエレベータのない住宅で、入居者も60歳以上の高齢者が多く住む高齢団地となっている。 Dsc01897

 URでは平成18年から全体4期に分けて、再生事業に取り組んでおり、現在最終第4期区域に着手したところだ。とは言っても、URの事業着手とは入居者説明会を開催したことを指すから、ハード的な整備状況としては、第1期区域の先工区で建替えが完了し、後工区でちょうど入居者募集をしているところだった。また第1期区域の一部は民間ディベロッパーに売却され、分譲マンションが完成間近という状況である。

 第2期区域は、今回完成した第1期後工区の賃貸住宅に入居予定の方たちが今まさに入居を待っている状況。木造サッシュが珍しい。移転後は解体され新しいUR賃貸住宅が建設される予定だ。また第3期区域の一部は商業施設用地として、今春に事業者が決まった。さらに第4期(民間事業者へ譲渡予定)へと着々と団地整備が進められていく。

Dsc01891 また、団地西側の区域はUR賃貸住宅活用エリアとして、現状の階段室型5階建てのまま、継続管理していくこととしている。この区域が721戸。第1期・第2期でUR賃貸住宅として建て替えるのが448戸。残りは民間事業者へ譲渡する計画だ。

 今回はまずUR中部支社住宅経営部の方にこうした団地再生計画について説明いただき、また合わせてUR全体のウェルフェア事業の取組方向や事例を説明していただいた。

 現在2,196戸から1,169戸へとかなり大胆に縮小していくのは、URの置かれた立場からすれば既定の路線か。このうち721戸は現状のままだから、建替え住宅に限れば、1,475戸を448戸へと約3割まで縮小する。もちろんその代わりに民間分譲マンション等が導入されるわけで団地としては入居者バランスの観点からも適正化の方向だろうし、団地周辺も戸建て住宅が多い郊外住宅地で、昨年春には地下鉄・鳴子北駅が開設され、今後はさらに発展が見込まれる。

Dsc01906 こうした地の利がある団地で、団地再生のテーマは「多様な世代が暮らし続けられる地域拠点の再生整備」。もっとも団地内に鳴子小学校と鳴子中央公園を抱え、既存の幼稚園もあることから、子育て支援施設整備は既に名古屋市の手で整備済み。

 高齢者支援について、今回、団地内に事務所を設置し、施設整備を進めているNPO法人・たすけあい名古屋の渡部理事長に話を伺った。ちなみに現状のまま継続管理するエリアは、URの団地将来像イメージでは、「緑豊かで閑静な環境を享受する住宅ブロック=高齢者支援サービスを享受する高齢者をメインターゲット/上層階には鳴子の住環境を評価する若年世帯」と謳われている。ゆったり配置された住棟が豊かな緑の中に立地しているのは、確かにすばらしい。ただし、階段室型5階建て住棟の上層部を「鳴子の住環境を評価する若年世帯」と謳うのは、わからないでもないが、実際の入居者はどうなのだろうと心配になる。 Dsc01911

 「NPO法人・たすけあい名古屋」の事務所はUR賃貸住棟の1階、かつてはショッピングセンターが入っていた区画を借りている。NPO創設は平成9年。当時は代表理事の自宅を事務所にしたが、9年ほど前に鳴子団地内の空き店舗を借り、さらに団地中心部の空き店舗も借りて拡張した。業務は介護保険事業と生活支援サービス活動。典型的な介護福祉NPOだが、鳴子団地を中心とした鳴子町周辺を活動領域に、地に足のついた活動を展開している。

 平成22年度に愛知県医師会総合政策研究機構の調査に協力して、鳴子団地の高齢者生活実態調査を実施。鳴子団地の高齢化率は39%、団地に住んで30年以上の世帯が64%などのデータを得ている。介護保険利用者は6%で要介護認定が3%というのは思ったより低い印象だが、今後急速に増加することが見込まれる。 Dsc01913

 代表理事は特に独居・認知症高齢者の増加を懸念されていた。そこで、介護保険を利用されていない94%の方の見守りについてどう考えるか質問したが、「それは政治的課題だ」として答えてもらえなかった。認知症高齢者の増加というのは、介護業務の増大に伴う十分な介護予算確保の必要性を主張したかったのかもしれない。私としては介護保険にたどり着く前に一人で死亡する独居高齢者の孤独死問題への対応を聞きたかったのだが、質問の意図を理解してもらえなかったのかもしれない。団地に根づいたNPO等が独居高齢者の見守りに積極的に取り組んでもらえるといいと思うが、何らかの支出支援を受けなければ、NPO経営上は難しいということか。

 NPOでは事務所の隣の区画を借り上げ、定員25名の小規模多機能施設「鳴子のおひさま」を昨年10月にオープンした。質疑応答後、この施設を見学。ただし居住部分は支障があるため、食堂を通り過ぎただけ。裏側に鉄製階段を設置し、緑豊かな団地内公園に面している。将来的には喫茶店等の営業も模索しているとのこと。また隣は団地集会所になっており、地域の高齢者を集めた健康体操の会なども開催しているそうだ。

Dsc01907 帰りに、第1期後工区のUR賃貸住宅のモデルルームを見学した。2棟106戸のうち、従前団地入居者向けを除く22戸を一般募集中。2DK(55m2)7万円台、3DK(68m2)9万円前後というのは立地と仕様からすればけっして高くない。私たちが訪問したときにも残り戸数は少なくなっていたが、今HPで確認すると全戸申し込みがあったようだ。

 豊かな住環境と地下鉄開通で利便性が飛躍的に向上した鳴子団地は、URの再生事業の中でもモデル的な取組ができた団地の一つだと思われる。そして意欲的なNPOの存在。その中で思い切って継続管理エリアを設けて緑を保存し活用する姿勢は評価できる。また、共益費を団地全体で融通する中で、公営住宅に比較すると既設住棟の美観も十分保たれている。課題は今後、継続管理エリアの入居者のさらなる高齢化が予測される中で、どういう環境になっていくかという点。URが謳うような「上層階には鳴子の住環境を評価する若年世帯」がそれほどいるとは思えない。たすけあい名古屋の代表理事の言うとおり、独居高齢世帯の問題に対して、対応策を考えるのは名古屋市の福祉部局ということになるのかもしれないが、この点に対するURの積極的な関わりについてはあまり聞かれなかったことが残念だ。

●マイフォト 「UR鳴子団地の再生」