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空き家急増の真実

 日本の人口減少が始まるにつれて、過疎地や地方都市において空き家の増加が問題となりつつある。いや都市部でもニュータウンの空き家増加は大きな話題になっている。空き家問題については、老朽化して放置された危険な空き家の撤去をいかに進めるかという問題と、空き家の再活用をいかに進めるかの二つの課題がある。

 本書では、住宅・土地統計調査から見る空き家の実態と、首都圏や地方都市・過疎地・ニュータウンなどそれぞれの地域で行われた実態調査から見る課題を紹介した後に、2050年までの空き家の将来予測と地域別の展望を述べ、空き家対策の事例紹介と空き家活用等の施策提言がされている。

 今後、空き家問題が全国的な課題となってくることが予測される中で、現時点における一般読者向けの網羅的な解説書となっている。もちろん行政や不動産関係等の専門家にとってもわかりやすく大いにヒントになる。

 しかし今後、人口・世帯が減少していく中では、住宅が今以上に余ってくることは明らかである。そういう点からは、空き家問題はいかに空き家を撤去していくかが最大の課題であり、いかに地域縮小していくかという課題と同質である。本書でも述べられているが、ある意味、無居住地域になってしまえば、どれだけ空き家があろうとそれが問題となることは少ないとも言える。そういう意味ではいかに地域撤退していくかという課題も同時に検討していく必要がある。また、その前段階として、無用な新規建設を抑え、質のいい既存住宅の賃貸活用を促進する政策は大いに意味がある。

 本書では具体的に空き家撤去のための施策事例を紹介するとともに、中古住宅活用のための諸方策について提案しており興味深い。また、老朽分譲マンション対策としてREIT利用の賃貸マンション化についても提案している。老朽マンション対策としてはこれまで、建て替え促進が主要な施策であったが、これで解決できる既存マンションは数少ない。区分所有形態から欧米のコープ方式への展開が解決のために最も有効な方策の一つだと思われるが、なるほどこういう方法があるかと感心した。

 1点、疑問に感じたのは、公共賃貸住宅の空き家問題を論じている点。少なくとも応能応益家賃方式への転換で公営住宅の空き家は少ないし、仮にあるとすれば、立地や家賃設定の問題なので、必ずしも性急に家賃補助制度への転換を進める必要はないのではないか。もちろん住宅のセーフティネットとしての家賃補助制度への転換は理解できるが、空き家対策として提案されることには違和感を感じた。

 その他にも、持ち家取得促進税制の廃止など大胆な提案が多く書かれている。空き家率の上昇は、住宅政策を根本的に改めていく必要があることを示す強いメッセージだという筆者の指摘はまさにそのとおりだと思う。

●空き家が解体されず放置されている要因として、この調査では、解体にお金がかかること、住宅の建っている土地とそうでない土地で固定資産税に違いがあること、相続者が不在であることなどを指摘している。(P75)
●奥山と都市の中間に位置する里地里山については、2005年時点で人が居住している地域の4割(国土の1割)が、2050年には無居住または低密度居住地域になると予測されている。/相続人不在の場合の財産管理人選任事件の件数は、ここ10年の死亡者当たりの事件件数の割合増加が続くと仮定すると、2050年には2008年時点の4倍まで増加し、所有者不明の土地が増加する。(P112)
●今後の空き家問題を考えていく上で重要なのは、無居住地域が大幅に増加するという点である。無居住化した場合、建物は朽ち果て、やがて廃墟と化していく。
●富山県滑川市の危険老朽空き家対策事業(2008年)は、建物と土地を市に寄付することを条件に撤去を行い、撤去後の土地の維持管理については地域住民に委託される。撤去費用を全額公費で負担するという点で長崎市の仕組みと異なっている。・・・これらの仕組みは、空き家を撤去して地域のオープンスペースとして活用していく試みとして、興味深い事例である。(P131)
●賃貸物件に住み続けるという選択をしやすくするために、一定の条件を満たす賃貸住宅に住む場合には、家賃の所得控除を認める仕組みを設けることも考えられる。これは形を変えた家賃補助的な意味合いを持つ。(P208)
●今後の老朽分譲マンションの再生手法として提案したいのが、ファンド主導(証券化手法)での賃貸化である。すなわち、ファンドがすべての区分所有者から物件を買い取り、分譲マンション全体をリノベーションした上で、賃貸マンションとして再生するというものである。(P211)