最近の大学建築学科の研究室選び

 名古屋大学の恒川先生がfacebookで、意匠・計画・都市系の研究室の4年生配属が少ないと嘆かれて、ひとしきり話題になっていた。

 実は娘はその3年生に在学しており、まさに計画系を選択しなかった一人なので、学生側からの話も含めた現状と感想を一言。

 というよりもまず、4年進学時の研究室の選択にあたり、学生相互で非常に精力的に調整がされていることにびっくりした。私のときは学校に希望の書類を出して、そのまま認められたので、学生同士での調整など一切なし。友人がどこを選択したのか、後から知った始末。もっとも私の場合は、期末試験が終わるとすぐに帰省したから、ひょっとしたら残っていた学生同士では調整とかしてたのかな?

 それはともかく、今年は一人、幹事を決めて、彼に第1希望を提出。定員内の研究室はそれで決定し、定員オーバーした研究室は学生間で話し合って決めたとか。どうしてもその研究室に行きたい人もいれば、第2希望と迷っている人もいて、どうしても譲らなければ、成績比較や研究室の先生に判断を仰ぐということらしい。

 この選択の前に、幹事や数人の学生が研究室訪問を企画し、先生に直接どんな研究をするのかなどを聞きに行く。うちの娘も4つばかりの研究室訪問に行ったが、いずれも構造系だったのは、彼女の希望による。ちなみに名古屋大学で有名な福和先生の研究室訪問は、先生多忙につき、朝7時半からの30分間だったとのこと。さすが。

 最初の希望開陳の日。結果はメールで流されたが、「合格発表の時と同じくらい緊張した」と言っていた。結果は計画系が2名(計画系希望者は少ないという情報が予めあり、最初希望を出さなかった学生もいた)、環境系に殺到。娘の希望する構造系は満遍なく分かれたがどこも定員に余裕があるという状況だったらしい。それにしても、環境系であぶれた学生が計画系ではなく構造系に流れたのはかなり意外。

 名古屋大学の設計演習は、少なくとも私が学生だったころに比べるとかなり熱心、というか厳しい。課題提示後、毎週のようにエスキースチェックがあり、模型まで含めて毎週描き直し、作り直している印象。もっとも最後の方はだいぶ慣れて手を抜いていたが、それでも私のときとは段違い。中には指導が厳しい先生もおり、泣き出す女子学生もいるとか。

 ただ、今年、計画系を選択する学生が少なかった要因は、谷口先生退官後の体制を明確に学生に示せなかったことと、今年度後期の設計演習が某先生の長期出張で例年と異なる指導体制になったことが影響したというのが娘の意見だ。構造系も大学院進学後(再来年)の体制が不明確な研究室は敬遠されている。

 今どきの学生は、不安定な社会情勢を反映してか、単に自分の関心や興味だけでなく、就職先や大学院進学後の指導・研究体制まで考慮して、できるだけ多くの情報を集めて検討し選択をしているようだ。

 facebookでは、就職を考えて環境系を志向する学生が多いのではという意見もあった。構造もかつては計画の下請けという印象だったが、アネハ事件以降、構造の重要性が認知されてきた。昨年、構造家の佐々木睦朗氏の講演があった際には、他学年の学生も殺到したそうだ。また、最近は建築よりも土木の人気が高まっているという話もある。そういう状況の中で、実務としての都市計画や建築設計がどれだけ将来性や魅力を提示できているかが問われている。コンバージョンや都市再生位しか新しい潮流が見えない状況では、計画系の人気低迷はしばらく続くのかもしれない。