新たな担い手たちが共に創り育てるまち

 6月8日に開催された「あいちまちづくりシンポジウム」は、「新たな担い手たちが共に創り育てるまち」をテーマに、地域住民が主体となったまちづくりを実践している名古屋学院大学の水野教授と、NPO法人岡崎まち育てセンター・りた事務局長の三矢氏が講師となり、それぞれの講演と両者によるトークセッションが行われた。少し遅れての出席となったため、水野氏の冒頭の部分を聞けなかったが、期待以上に面白いシンポジウムだった。

 前半の水野教授からは、「まちづくりの担い手としての大学・商店街・NPO」と題して、学生がゼミの一環として商店街の活性化に関わってきた瀬戸市銀座通り商店街と名古屋市熱田区の日比野商店街での体験を語られた。レジュメには「銀座通り商店街物語」(2001年~2007年)と題して13話に及ぶ項目が挙げられており、これに沿って話を進められた。

 水野先生のブログ「まちづくり活動記録」を見ると、第1話から第4話までが紹介されている。多分これから第13話まで書き足していく計画なのだろう。その中で、特に先生が強調されていたのは「第5話 続けるための祝詞・職務分掌」だろうか。大学の中で、また地域とも、取組についての関係者の位置付けや関わり方をはっきり明文化しておくことが継続・発展のためには不可欠という話だ。

 学生が運営するカフェ「マイルポスト」については公式HPに詳しい。瀬戸市座商店街はその後、経済産業省「がんばる商店街77選」に選ばれ、瀬戸市も注目し支援を始めている。また、「第13話 勝ち馬に見せることで人は集まってくる」では、「話題性、社会性、継続性が大事だ」という話と、「事業ミッションから地域ミッションへ」という話をされていた。

 後半の三矢氏からは「市民的自由をつなぐNPO-Libraと岡崎のまちづくり」と題して、岡崎市の中心市街地・康生地区に完成した「岡崎市図書館交流プラザ(愛称Libra)」を巡り、施設利用を核に設立された市民グループ「りぶらサポータークラブ」、地元商店主を中心としたNPO法「岡崎都心再生協議会」、そして三矢氏らが設立した市内のNPOを支援するNPO法「岡崎まち育てセンター・りた」の活動などが紹介された。

 「りぶらサポータークラブ」では、施設側の取組とは別に、託児サービスや昔語り活動、周辺散策マップの作成・配布、利用者の統計分析などを自主的に行っている。また、「岡崎都心再生協議会」では、商店街店主による市民向けゼミナールなどの活動が行われ、これらの市民団体が集まり、「りぶらまつり」も開催されている(あ、今年は今週末の6月18日だ)。

 もう一つ、三矢氏が紹介していた活動が「青空クリエイターズフェスタ@籠田公園」だ。これは中心市街地でブティックを経営する女性が、籠田公園に全天候型の舗装がされるという話を聞いて、芝生にしてほしいという思いから、芝生の維持管理を地元で捻出しようという企画として始めたイベントだ。この経緯が当日配布された「岡崎まち育てセンター・りた」のニュースペーパー「Litaracy」に書かれているが、講演の中で三矢氏が披露したのはその女性が毎日続けているクリーンランニングの話だ。地域への恩返しの気持ちからジョギングがてら公園の掃除をし、そこで出会った事柄を岡崎市SNSオカコミュに綴っているもので、そこから様々な出会いや取組への発展の芽が生まれていると言う。

 これらのLibraを巡る地域の多様な活動は全くもって目を見張る思いだが、活動が今後どう継続・発展するか、また、籠田公園はどう生まれ変わるのか、どんな活動が生まれるのか。三矢氏と岡崎の今後の動向に目が離せない。

 シンポジウムの最後は両者によるトークセッションである。「まちづくりの担い手を育てる5つの秘訣」と題し、「おす」「つなぐ」「覚悟する」「続ける」「越える」の5つのワードを巡り、まちづくりの秘訣について話をされた。様々な話が展開されたのだが、何より二人ともとても楽しそうだったのが印象に残った。

 「まち」を舞台に「遊ぶ」というのは、私のこのブログのテーマの一つだが、それをまさに実践している二人だった。もちろん「遊び方」は人それぞれだが、まち遊びが各地で多く実践されていることは、私もうれしい限りだ。みんなもっと楽しんでください、とエールを送ろうと思う。