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桑名市赤須賀のまちづくりと水郷景観

 桜まっさかりの桑名市へ行ってきた。建築学会東海支部都市計画委員会恒例の春の交流会。桑名市へは2002年9月に中心市街地を歩いたことがあるけれど、それ以来の実に9年ぶりの訪問。当時は中心市街地活性化計画を中心に話を伺い、見学は駅前の再開発や寺町通り、六華苑などを廻った。見学の最後の方で、「典型的な漁村集落である赤須賀地区も面白いですよ」という話を聞き、是非とも行きたいと思った記憶がある。それから8年半、ようやく念願がかなった。 Kuwana03

 当日は赤須賀地区に平成22年5月に完成オープンした公共施設「はまぐりプラザ」に集合。まずはここで市役所の方から、桑名市景観計画の概要と赤須賀のまちづくりの取組みについて伺った。

 ちなみに「はまぐりプラザ」は、地区の公民館である城東公民館と業業交流センターを合わせた施設で、展示室や会議室等から成り、赤須賀漁協も建物の一画を占めている。また、厨房施設を利用してレストランを開業し好評を博している。設計は内藤廣建築設計事務所。鉄骨造4階建てだが、杉板の外装、切妻屋根が3棟並ぶ外観は周囲に溶け込んでやわらかい。堤防側に開いてデッキがめぐり、大きな階段が道路際まで裾を広げている。

 さて、赤須賀地区である。その歴史は慶安4年(1651年)新田開発がされた頃にさかのぼる。その後、河川改修に伴う開発・移住があり、さらに戦災を受け、すべての建物が消失した後、従前の狭い路地のまま建物が再築され、現在の町並みをつくっている。江戸時代から漁師が集団で住み、大正年間には総戸数670戸、人口3,000人余を数えた。昭和24年に赤須賀漁協が設立されたときには600人を超える漁業者が加盟し、年間3,000トンの水揚げを誇ったが、河口堰の運用で漁獲高が激減。その後、育苗・稚貝放流等の取り組みにより、100数十トンまで回復してきた。

Kuwana01 町並みは「猫とび横丁」という俗称がよく物語っている。路地幅員2m程度のびっくりするほど狭い路地が何本か奥に伸びている。路地を挟んでモノの貸し借りもできそうなほど。平成15年に、地震時に大規模な火災の可能性があり重点的に改善すべき密集市街地である「重点密集市街地」に指定された。  平成16年度に設置された河川改修に伴う赤須賀水門改修のための地元組織「赤須賀ネットワーク懇談会」をベースに、翌年度には、三重県が密集市街地整備基本方針の検討モデル地区の一つに取り上げて、自治会や漁協、消防団等の関係者が集まった地元懇談会が設置された。これが18年度の「赤須賀まちづくりの会」設立につながる。

 毎月1回メンバーが集まり、老朽住宅対策や避難路等の問題、及び住民啓発等について検討、まちづくりニュースの発行などを行っている。桑名市では、まちづくりの会から老朽化した空家への不安の声が多くあったことから、まちづくり交付金を活用し、平成21年度から「空家老朽住宅等除却補助事業」に取り組んでいる。22年度までに6棟が除却された。

Kuwana11 建替えたくても敷地が狭く建蔽率も目一杯なことからほとんど建替えが困難な状況にある。密集解消のためには2項道路の拡幅を行う必要があるが、現在はそこまでは進んではいない。「赤須賀まちづくりの会」は平成21年に「NPO法人 赤須賀まちづくり推進協会」に改組。さらに活発な活動を目指している。

 というような話を伺った後、現地見学。まずは最も古い街区である一・二番組地区へ。話にあった路地や空家除却後の空き地を見て回った。子供たちが意外に多い。案内の市職員があいさつした若い男性は漁師で生計を立てていると言う。

 川沿いの港にはたくさんの漁船が並んでいる。ただし川漁が中心のため、小さい船が多い。高潮に備えた高い堤防から明治の河川改修で移住した五・六番組地区を見る。こちらは東西方向に整然と路地が入り、密集してはいるが、一・二番組ほどの迷路感はない。はまぐりプラザの裏手は船止まりとなっており、揖斐川河口との間に立派な水門が整備されている。

 空家が除却され、空き地がぞくぞくと出現する。整備計画では道路拡幅の予定になっている。地区内でも建替えが可能な敷地には、現代風の建物に建て替わっている。このまま計画通りに道路拡幅がされると、今のような生活感のある町並みとそれに拠ってたつコミュニティが残っていくのかと心配でもある。

Kuwana15 しばらく堤防を歩き、その後集落の北辺を通って神明社、さらに九華公園の南端を歩く。九華公園は桑名城址だが、お堀端の桜は満開で多くの市民で賑わっていた。そのまま西辺を巡り、公園北端へ。前回見学したときには工事中だった水門管理事務所は、当時の蟠龍櫓として再現された。

 その西には七里の渡し跡。大きな鳥居がそびえている。ここから熱田の宮の渡しに至るのが正式な東海道ルート。七里の渡しから西へ旧東海道沿いに雨水浸透式の道路整備がされている。住吉入江を北に渡ると河川整備に伴い移設された住吉神社。このあたりは国の七里の渡し周辺整備事業で整備され、前回見学時と大きく変わっていた。

Kuwana22 六華苑は夕方でもう閉園されていたので、住吉入江を廻って寺町通りに向かう。入り江の角に架かる橋は船の通行のために上下移動する。角の内側には石積みの蔵がある。石取祭りの山車が入っている。また、歩道沿いにはかつて用水が流れていたことを示すシンボル施設が整備されている。

 寺町商店街を抜け、桑名市民会館へ。こちらは耐震補強とともにリニューアルしたとのこと。とてもリニューアルとは思えない外観ですばらしい。しかし、はまぐりプラザまで30分近く歩き、さらに久しぶりのまち歩きはさすがに堪えた。最後は足を引きずりつつ懇親会場へ。前回見学時も感じたが、桑名のまちづくりは本当にすごい。そのパワーの源泉はどこにあるのか、特別な財政状況にあるのかと聞いたが、通常の交付団体だという。とすれば、その源は人にあるのか。アピタなどの大型商業施設がオープンしてなお商店街が残り、駅前再開発も完成するのは、市民の愛着と支えがあってこそに違いない。

●関連サイト 「中心市街地すまい研究会:桑名市の中心市街地について」

●参考 マイフォト「桑名赤須賀のまちづくりと水郷景観」