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分譲マンションは今後どうなるのか?

 都市住宅学会中部支部主催、研究交流会「分譲マンションは今後どうなるのか?-時代の変化が予想する成立と存続の条件」を聴いてきた。講師は、元高崎健康福祉大学大学院教授・元国立公衆衛生院住宅衛生室長の松本恭治氏。既にこれらの役職から退職され自由な時間を謳歌しているはずだが、マンション研究に対する松本氏の熱情は衰えることを知らないようだ。群馬県に立地する分譲マンションを、不動産物件チラシを片手に四方八方訪問し、その実態を調査。また、国勢調査や住宅土地統計調査等の分析も精力的にこなし、両者を合わせて見えてくる分譲マンションを巡る問題を多面的かつ説得力を持って説明・報告をされた。

 講演を聴き終わった後、その膨大な情報の前に、今聴いたことをどう捉えたらいいのか、呆然としてしまった。ほとんど頭に残っていなかったというのが正直なところだ。その後、講演とともに配布された「都市環境の変化が分譲マンションの成立と存続に与える影響について」と題する論文を読んで、松本氏の言いたかったことを思い起こしてみた。

 一言で言えば、「分譲マンションという形式は、非常に問題が多い」ということと、「この問題を解決するには、都市計画・地域政策の役割が大きい(若しくは、無関係でない)」ということだろうか。松本氏が報告されたマンションの実態はそれほどまでに深刻であり、衝撃的であった。

 松本氏が取り上げたマンションは、群馬県内に立地するものがほとんどである。もちろん群馬県内のマンションの多くがこうした状態だというわけではなく、問題マンションについて典型的に述べたものと思われる。それにしても氏が語る分譲マンションの実態は衝撃的である。

 第一に指摘されるのは、空き家が多い、ということである。これは分譲ばかりでなく、賃貸住宅も「当初の4年間は借り手があるが、その後は間違いなく空き家が増える」(不動産業者の弁)そうである。そして空き家が増えると維持管理が困難になり、老朽化が進行する。

 2点目に施設併設マンションの問題化である。下階が店舗等になっているマンションで空き店舗が発生した場合、上部の住戸価値も着実に下がり、老朽化が進展する。店舗等が大規模な場合は特にひどい。床面積の4割近くを店舗事業者が所有していたマンションの場合、経営者の倒産とともに管理費・長期修繕費が滞納され、マンションの維持が困難になっている。

 3点目に機械式駐車場の問題が挙げられた。駐車場を100%以上確保することは地方の分譲マンションでは必須である。このため機械式駐車場を設置した場合、数年で故障が頻発。しかし修理・メンテナンス業者が近くにおらず、またひどい場合には修繕のための積み立てもされていないケースがある。結局、住民が隣接の農地を借り上げ、青空駐車場として確保し、機械式駐車場は撤去したマンションもあるそうである。

 その他、暴力団組長が住み着いたマンションや駐車場のはずの土地がデベロッパーにより不法売却されたマンション、理事長が積立金を使い込んだケースなど、さまざまな問題マンションが見られると言う。

 遠隔地にある分譲マンションの多くは、販売後短期間に中古売買価格が低下する。すると住宅所有者にとってその住宅は、「住み続けられる住宅から住み続けざるを得ない住宅に変化する。そして高齢者、単身者、低所得者ばかりが残ることになる。かつ、地元からの住み替え者が減少し遠隔地からの入居者が増え、人間関係に乏しく、地域活力も低下する」。悲惨である。

 松本氏が強調していたもう一つの特徴は女性単身者の増加である。これは特に都心部で見られる傾向だが、講演会後の懇親の場で、「女性が多いマンションの管理組合や理事長が女性の場合はどうですか」という質問に対して、「『理事長や管理組合は女性に限る』という建築家もいますよ」と答えてみえた。

 講演会は多様な話題と豊富なデータを駆け足で説明されたが、最後は結局、時間切れの尻切れトンボで終わってしまった。講演の中でも、市街化調整区域からの市街化編入が行政主導であまりに無計画に行われているのではないか、という指摘があったが、こうしたことも含めて、論文の中で松本氏が指摘するのは、「分譲マンションは地域社会の影響を受けやすい。地域社会が変貌すれば、マンションの存続条件を危うくする場合がある」ということである。

 論文の冒頭、マンションの問題化の「主な理由は、都市の不安定さと管理に対する社会的関心の低さである」という文章があるが、行政は分譲マンションに対して、管理規約や管理組合、長期修繕積み立て等の重要性は啓発するが、発生した問題に対しては民事対応に委ねている。しかし、問題が分譲マンションという供給システム自体から発生しているのであれば、分譲マンションの供給自体を規制したり、制限することもあり得る。

 もちろん松本氏自身はここまでの極論を述べているわけではないが、地方の分譲マンションで起きている問題は、日本の住宅・都市事情に対して大きく影響を与える問題であり、いよいよその対応を真剣に考えるべき時期が来ているのかもしれない。分譲マンションは日本の住宅・都市事情における大いなる負の遺産である。