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日本版グリーン・ニューディール政策への提言

 「ドイツの省エネリフォーム政策」で紹介した村上敦氏の本を読んでみた。本と言っても一般の書店やAmazonなどでは流通しておらず、以下の販売サイトからダウンロード購入した。

○イオルウィズ「日本版グリーン・ニューディール政策への提言」

 ちなみに、こういう形ですべての書籍も販売してもらえば、専門書ももっと気楽に購入することができるのにな。電子書籍化はこういう形から普及していってほしいと切に願う。

 『「フィードインタリフ思想」が経済を活性化する』という副題が付けられている。「フィードインタリフ」とは、再生可能エネルギーからの固定電力買取制度のことだが、ここで「思想」という言葉が付け加えられているのは、単なる補助金制度や優遇制度というだけではなく、買取費用を売却する電気料金に上乗せすることで、税金等の投入をせずに自然エネルギー転換をしていることを指していると思われる。

 ドイツのフィードインタリフ制度について、非常に詳細に報告されており、毎年度、買取価格の改定が行われ、また政権交代等により不安定な状況にも見舞われている実態が包み隠さず紹介されている。その点で正直だが、同時にこれまでの成果の絶大なことも紹介されており、説得力がある。

 日本でもようやく昨年11月から同様の制度が実施されているが、ドイツに較べると微温的で、今のところドイツのような爆発的な効果は出ていないのが実態ではないか。

 加えて著者が力説するのが、グリーン・ニューディール政策は雇用効果が第一に考えられるべきだという点。フィードインタリフ制度の導入により、ドイツの自然エネルギー関連の雇用は爆発的に伸びており、工業生産量と工場従事者を増やすのではなく、取付工事などの価格当たりの手間を要するもの、すなわち雇用をより多く創出する事業に取り組むことが、グリーン・ニューディール政策上の重要なポイントだと指摘する。加えて、輸入エネルギーを減少させ、国産の自然エネルギーに振り替えていくということは、自国の国富の海外流出を防ぎ、内需を喚起するという経済的な効果も大きい。

 最後の第6章では、先のエントリーで紹介した内容であるが、グリーン・ニューディールによる雇用効果として、リフォーム事業の活性化が効果の大きいことが力説されている。

 また第6章の最後は、2009年に環境省が公表した「緑の経済と社会の変革」(日本版グリーン・ニューディール)に対する評価と提案となっている。辛口の批評になっているのは言うまでもないが、批判に留まらず提案を行っている点が興味深い。中でも、「拡大生産者責任」について、効果と意義を書いており、なるほどと納得する(内容は以下の引用のとおり)。

 日本の現在の政治状況は、昨年末のコペンハーゲンでの環境サミット以降、マスコミの「政治とカネ」報道や普天間問題、そして参議院選挙後の民主党内紛等により、実質ストップしている感がある。円高問題から経済対策の必要が叫ばれているが、グリーン・ニューディールはどうなってしまったんだろう。目先ではない先を見通した経済対策が求められるが、本書はそのための重要な示唆をしているように思うのだがどうだろうか。

●中・長期的な視野で見てみると、ドイツはこの〈再生可能エネルギー法〉によって、現在の私たちがコスト負担(毎月最大35ユーロ/世帯/月)して投資を行うことで、未来の子どもたち世代のために安価な再生可能エネルギーによる社会を構築しようとしています。私たち工業先進国で生活する人間は、誰でも多かれ少なかれ、本来は自身で負担しなければならないはずの自身で引き起こした問題を、他の地域(とりわけアフリカなど南の第三世界)、そして将来の世代にツケや負の遺産を回していることは異論の余地がありません。そうした「ツケの先送り社会」という問題を考えたとき、私が知る限りでは唯一この〈再生可能エネルギー法〉、フィードインタリフは、将来の世代へ「ツケ」ではなく、「恩恵」をもたらすために投資を行うモデルなのです。まさに人類が発明した偉大な制度といえるのではないでしょうか。(P46

●すべての再生可能エネルギー産業の市場規模は、255億ユーロ(約3.3兆円)という大きな産業に成長しました。当然、この一大産業を支えるためには、膨大な雇用を必要とします。2007年末までにドイツでは、およそ25万人の雇用がこの分野で創出されました。ドイツ環境省の調査によると、少なくともこのうちの60%分の雇用が、フィードインタリフの恩恵であることが分かっています。つまり法律ひとつで、7年間で15万人分の職場を創出したのです。フィードインタリフは、グリーン・ニューディール政策の基本だという私の意見も、この数字で納得できるのではないでしょうか。(P53)

●その政策がグリーン・ニューディールと呼ぶことができるか否かは、資源に支払うお金の循環(というより放出)を最小化し、人に支払われるお金の循環を最大化することであると私は考えています。/それに加えて、安全保障やエネルギーの安定供給という理由、大義名分である気候温暖化対策という理由があるからこそ、このグリーン・ニューディール政策は意義があるのです。さらにもう一つ、大きな意義がここには隠されています。それは、この経済分野はまだはじまったばかりであり、国内市場、世界の市場がまったく飽和していないことです。(P66)

グリーン・ニューディールという政策の本質は、定義を行えばごく簡単な一文であらわすことができると私は考えています:「あるお金の流れが発生するとき、あるいは発生させるとき、できる限り多くのそのお金の流れが、人の労働賃金として幾重にも支払われる経済政策をグリーン・ニューディール政策と呼ぶ。」・・・ここで最も注目しなければならないポイントは、そうした自然エネルギーの促進は、“鉱物・エネルギー資源に流れるお金を最小限に抑えて、国内の人の労働賃金へのお金の流れを最大化”するところにあるのです。(P107)

●エネルギー・リフォームに対する助成プログラムで特筆すべきことは、CO2削減1トンあたりにかかる投資コストは国の立場からすると、「マイナス58ユーロ≒マイナス7,500円」と算定されていることです。つまり、通常の公共が行う温暖化対策は、CO2削減のためにコストが発生しますが、エネルギー・リフォームの分野では、利益が発生するのです(!)。(P173)

●拡大生産者責任とは、商品を使用する市民やその市民が居住する自治体にリサイクルの責任、つまり分別の義務や回収など膨大なコストが発生する責任を課すのではなく(これは単に、「排出者責任」と呼ばれます)、その商品を提供する企業に分別から回収、リサイクルまでの責任を拡大して課すものです。これを行うと2つの利点が同時に得られます。まず1つは、企業側に直接コスト負担がかかりますから、・・・企業は商品の低価格化を実現するために、市場原理で商品のリサイクルにかかるコストを下げようと努力します。・・・次に、リサイクル産業の確立です。・・・1ヵ所で大量に同素材の物質が分別されるため、その素材が中古素材となって新品の素材市場と同じように流通が確立されるようになります。(P193)

電子書籍だと引用が楽なので、ついつい長文ごと引用してしまいます。村上さん、お許しください。)