読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

地域の再生は地域力による。住宅市場は誰が整備する?

 第5回あいち住まい・まちづくり研究会は「地域戦略」をテーマに、愛知大学三遠南信地域連携センターの黍島先生から「中山間地の居住と定住」、名古屋大学小川准教授から「地域戦略としての中古・賃貸市場の整備」について報告・提案があった。

 前半の黍島先生からは、三遠南信地域(奥三河、北遠州南信州)の人口動向等の説明の後、先進的な町村で取り組まれている定住促進・地域共住施策について紹介があり、地域力を核とした定住促進・地域づくり施策についての提案がされた。

 地域力を「地域コミュニティに内在もしくは蓄積されている地域資源、人的関係、機能・仕組み等の相互作用と地域を維持する人の力」と定義し、「地域に問題解決力があれば、地域は再生できる」という、ある意味当たり前な話であったが、地域の持つ資源やヒトが千差万別で、それぞれの地域が試行錯誤し取り組むしかない、というのは実際的な結論だろう。

 紹介された事例は、豊根村(以下、特に県名の町村は愛知県内)の短期滞在お試し居住(2~5年の期間で村外者に住宅施設を貸与。入居者は週末居住による利用も可能)や公営住宅建設、設楽町田峯地区の地区組織が事業主体となった宅地分譲事業、長野県下條村の若者定住団地、長野県泰阜村の村営住宅と高齢者協同企業組合による高齢者協同住宅「楽々長屋」、東栄町東園目地区における共住の取り組み(和太鼓集団「志多ら」の練習拠点となり居住)などである。

 これらの成功している事例については、それぞれの特殊要因があって結果に結びついているのであって、物真似すれば足りるわけではないのは言うまでもない。また、課題も垣間見える。例えば、豊根村の短期滞在お試し居住では、お試し期間終了後の定住に必ずしも結びついていないようだし、田峯地区宅地分譲事業も年1~2区画ずつ売れているそうだが、職の問題が大きなネックであることは間違いない。下條村飯田市までわずか20分という地の利が大きく影響しているし、泰阜村も税金や高齢者の保有資産を食いつぶして成り立っていると批判することが可能だ。また東栄町の共住の取り組みも、和太鼓集団という特殊なグループをつかまえた地域の勝利という気がする。

 研究会の進行を務める海道先生から、イタリアで高齢者ばかりが集まり暮らす町があるという話があり、会場からも「人口回復などの地域活性化を考えるのではなく、今までにない視点からの新たな中山間地の使い方、生かし方を考えたらどうか」という意見があった。

 まさにそのとおりで、かつて旧足助町で年齢別人口を調査したところ、都市部と違い団塊の世代が少ない人口構成に驚いたことがあった。当然、若中年層も少なく、このままいけば町が崩壊してしまいそうな気がするが、定年後の転入者がそれなりにいることに注目すると、また違った町の姿が見えてくる。当時の町長も「高齢者が年金を持って転入してきてくれるならそれはそれでありがたい」と言っていたが、泰阜村の高齢者住宅施策と同様の発想ができなくはない。足助では「したたかな山の暮らし」と言っていたが、中山間地域の地域力を生かすとは、まさにこうした発想の転換を言うのだろう。

 それでも日本の人口が半減する未来を見越すと、7~8割の集落は消滅の憂き目を見ざるを得ないかもしれない。孤独死の続出や災害発生、都市災害の惹起など悲惨な状況に至らぬための限界集落安楽死方策について、そろそろ真面目に検討すべき時期に来ているようだ。集団移転などの強制的手段ではない安楽な自然死を求めて。

 後半の小川先生からは、県民所得や人口動態、住宅需要実態調査等の統計データを用いての分析結果を示した上で、賃貸住宅市場と中古持家市場の機能不全の指摘があった。ノーベル賞受賞の経済学者、ジョージ・アカロフの分析を紹介し、賃貸市場においては貸し手保護が、中古市場においては購入者保護と情報提示が求められていると言う。後者については、第4回の齊藤先生の紹介された「いえかるて」がまさにそういう制度だが、小川先生からは、公営住宅を活用して魅力的な高齢者施設が併設された建替・改修を行うことが、持家居住の高齢者の移動を促し、中古戸建住宅と良質な賃貸住宅の供給促進につながって、住宅問題の循環的解決が図られるのではないかという「住まい版 循環型社会」が提案された。

 PFIを活用した公営住宅の建替整備という提案に対しては、適当な立地・条件の公営住宅の不在や制度的な隘路の指摘もあり、先生からも将来的な方向、一試案といった説明があったが、民間による高齢者住宅の供給と読み替えれば、循環の最初の起動は不可能ではないかもしれない。

 しかし、福祉サイドはあくまで在宅でのサービス提供を前提に制度を組み立てている状況の中で、福祉サービス付き高齢者住宅をアフォーダブルな価格で提供することは現状ではかなり難しい。加えて、介護保険制度や年金制度の将来像がいまだ不安定な状況では、第二の人生を将来の福祉制度に賭けるという選択を期待するのは相当に厳しいのも事実。だから公営住宅でというのかもしれないが、それは結局、行政依存にしか過ぎず、根本的な解決策にはなっていないのではないか。

 前半に議論された地域施策の担い手としては地域住民や町村が想定され、後半の住宅市場整備の担い手としては国または民間事業者が想定される。ではその中間の都道府県はこれらの問題にどう対応したらいいのか、何を持って貢献できるのかと考えると、明快な答えが浮かばない。

 両者の話を聞きながら、中山間地域と住宅市場というある意味両極端の問題が、なぜか私の頭の中では「中間自治体の役割はいかに」という一点の課題でつながった。もっともその答えが「不明」というでは何の解決にもなってはいないが・・・。「地域戦略」とはまさにそういう問題なのかもしれない。