■都市は如何に縮小されるか-若しくは、立地はいつまで都市を支配するか

 「第3回あいち住まい・まちづくり研究会」に参加してきた。この研究会は、愛知県が主催し、住まい・まちづくり関係の各課題について、毎回、テーマに応じた講師を招き、報告を聞き、意見交換をしているもの。今回のテーマは「都市(まちなか)・郊外住宅地・マンションの再生」で、前半を名城大学の海道先生から、後半は明海大学の齊藤先生から、それぞれ報告が行われた。

 海道先生からは、「名古屋都市圏におけるまちなか居住と郊外居住のいまとこれから」と題し、「都市化、郊外化の転換」、「郊外居住」、「まちなか居住」、そして最後に「都市空間構造からみたこれからの居住地と居住のありかた」について、「C&D」2010年1月号に掲載された内容を中心に、都市空間別の地域づくりの方向についての報告と提案があった。

 名古屋市では昨年公表した「低炭素都市2050なごや戦略」で、駅そば人口(駅から800m圏内)の比率を63%(2005年)から75%(2050年)に高めるとしているが、将来人口の減少を勘案すると、駅そば生活圏人口は140万人から145万人に増えるだけにとどまり、非駅そば人口が82万人から54万人に減少すると言う。

 人口縮小は利便性の低い地域に特化して問題となるという指摘だ。会場から都市の撤退に関する質問が出たが、海道先生からは「属人的なサービス低下はできないが、属地的なサービス低下が求められるかもしれない」という回答であった。現実的に考えるとどうだろうか。

 多分、戦略的に特定地域のサービス低下を図ることはほとんど無理だろう。結果的に、人口減少に伴う税収減は、都市全体における計画的な修繕工事を減少させ、突発的な事故対応を主とするようになっていくだろう。雪国では除雪作業を減少せざるをえなくなっているという話もある。昔、過疎の町で働いていた時に、道路の舗装修繕は役場がレミコンを支給し、作業は住民自らが行っていたが、そういう状況も普通になっていく。そして嫌気がさして移転する世帯もあり、逆に地域に愛着を持って残る住民もいる。最終的には、移転したいが移転できない高齢単身者等への対応が課題になるのかもしれないが、過疎地での経験ではこうしたケースは限定的でそれほど大きな負担になるとは思えない。

 一方で、継続居住者調査では、日常買い物と医療機関の立地が不満足度、重要度ともに高いが、ネット時代の進展とともに、店舗のあり方も変わるのではないか。すなわち店舗は実物展示の場となり、貨幣との交換・運搬機能はネット売買配達が主流になるというイメージ。そうした時に、都市はどうなるのだろうか。

 今、議論されている「都市の縮小」論は、都市を支えるサービス機能が現在と同じ方法で行われると仮定で考えているが、IT化や環境問題(資源の枯渇など)のドラスティックな変化を視野に入れると、必ずしも立地が都市構造を決める第一ファクターであり続けるとは限らない。人口減少時代における都市戦略をコンパクト・シティ(集中と撤退)だけで考えるのは現実的ではないとすれば、都市全体が均一に薄まって、かつ困らない(快適に暮らせる)ような都市戦略を考えていくことも必要ではないか。海道先生の話を聞きながら、そんなことを考えた。

 齊藤先生からは、「エリアマネジメント」「マンション管理」そして「住宅履歴情報(いえかるて)」に関する話である。それぞれ興味深いが、エリアマネジメントについては成功事例の分析と紹介、マンション管理と住宅履歴情報については、住宅所有者に負担のかからない仕組みが必要だという思いを強くした。そういう意味で、マンション管理については、第三者管理方式の早期導入と移行が、住宅履歴情報については不動産業者が主導して成功事例を残すことが必要だと思う。

 前半と後半でかなり課題の対象が異なったため、全体としては雑駁な印象となった研究会だが、個々の課題は個別に興味深い。また直面したら深く考えよう、と頭を振ったら全てこぼれ落ちてすっきりした。