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住宅施策の鬼っ子 公営住宅の行く末

 最近つくづく感じるのは、公営住宅は戦後住宅施策が生んだ最大の鬼っ子だということである。戦後住宅施策の三本柱と言えば、住宅公団住宅金融公庫公営住宅である。そしてそれらを計画論的に支えたのが住宅建設計画であったというのが、一般に言われる戦後住宅政策の構図である。

 しかし平成に入り、住宅公団住宅金融公庫が解体され、平成18年度には住宅建設計画法も廃止された。代わりに制定されたのが住生活基本法であり、国交省住宅局は生活省庁としての一歩を踏み出した。住宅不足という戦後最大の住宅問題が解決された以上は、方向転換とその方向に大きな誤りはないように見える。しかし如何せんツールがない。そこで模索しているのが、厚労省との連携であり、環境問題など他の行政課題へのアプローチである。省際局となり果てている。

 省際課題は他省庁がある程度取り組んでいる分野でもあり、住宅施策としてどう取り組むのか、非常に難しい。最近の厚労省と連携した高齢者対策は、経費削減をしたい厚労省の思惑に乗せられ、地方自治体を生贄に、実より名を取った愚策に見えてならない。まあ、こうした愚にもつかない施策を重ねた末に、厚労省の再編にうまく乗っかって、国民生活省の一郭に居を移すことができれば最大のヒットだろうが、うまく行くだろうか。

 こうして住宅施策が行き詰まっている中、むくむくと育ち、社会にとっての最大の鬼っ子になりつつあるのが公営住宅である。

 先日、指定管理者として公営住宅の管理を受託している組織の方に、最近の公営住宅の状況について伺う機会があった。公営住宅における外国人問題や自治会運営の崩壊、母子家庭等の増加による子どもの貧困問題の発生など、これまでも機会がある毎にこうした現況はこのブログでも報告してきたが、先日の話の中でもっとも興味を惹いたのは、低所得世帯が集積し、家賃未納者が増加しているという報告である。

 家賃未納については、今後、督促事務や悪質者に対する法的措置等により年度内では帳尻を合わせる方向で努力をするのだろうが、その原因である低所得者の増加はますます深刻になっている。

 そもそも低所得者向け住宅であるから低所得者が多いのは当たり前だが、最近の(そして今後も長く続くと思われる)経済不況の中で、所得が上昇し、公営住宅から移転していく世帯は非常に少なくなっている。それに加え、新規入居者の低所得化が拍車をかける。

 先日の話によれば、現入居者の所得分布は、所得区分1(所得月額104,000円以下:所得分位で下から10%以下)の世帯が6割。所得月額がこの半分(52,000円)以下の世帯が約4割。これに対して新規入居者の収入分布は10%以下の世帯が8割だそうである。所得月額とは、年間総所得から各種所得控除をし、月額に換算したもので、所得区分1では二人家族で年収2,584,000円未満。その半分の所得月額を年収換算すると、二人世帯で年収1,672,000円となる。(4人家族だと所得区分1で年収3,664,000未満、その半分では年収2,940,000円未満。)

 公営住宅の募集が高倍率な要因として、高額所得者がいつまでも居座っていることを指摘する論調も多いが、高額所得者として指導対象とされる所得月額397,000円以上の世帯(二人世帯で年収7,048,889円以上)は全体の2%未満に過ぎず、これらの世帯が全て退去したとしても倍率が大幅に改善されるわけではない。

 ある研究者が「公営住宅はスラムの再生産をしている。新たな部落問題を作っている」と指摘されていたが、まさにその方向へひたすら進んでいるというのが公営住宅の現状だ。この問題を住宅施策として解決するとすれば、収入基準を撤廃し高額所得者も入居できるようにするか、公営住宅を払い下げて撤廃するかのいずれかしかないのではないか。

 もしくは、いずれの方策も取れないのであれば、現実的な対応として、福祉施策と強力なタッグを組んで、低所得者集住地区として生活支援を行うしかない。もちろん、都市住宅施策としても、福祉施策としても正しく方向ではないし、福祉サイドにこうした認識はほとんどないのが現状だろう。そして、いよいよスラム化が進んでいく。公営住宅が住宅施策の最大の鬼っ子と考える理由である。