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減災のまちづくりと建築の危機管理

 防災まちづくりの第一人者、室崎益輝先生の講演会があったので参加した。ちなみに室崎先生の今の肩書きは関西学院大学総合政策学部教授。高名な先生でもなかなか再就職には苦労されているようだ。それはさておき・・・。

 いつも都市計画に関する話題が尻切れとんぼになってしまう、ということで、今日の講演会では最初にまちづくりの話題から始まった。最近の防災対策は、コミュニティ、ボランティア、帰宅難民対策のソフト対策に建物の耐震改修で終わってしまう。それでいいのか、という指摘だ。「ソフト+建築+まち」の3つが揃って初めて、バランスのとれた防災対策になりうる。

 現在の政府目標である建築物耐震化率90%は、一定程度、老朽家屋が建て替わることを想定して試算している。しかし密集住宅地では、狭隘道路や未接道敷地があり、建替えることができない老朽家屋が多くある。結果的に耐震化率は地区によってかなり差ができることになる。加えて、中途半端な壊れ方(改修)は、火災時に却ってよく燃えるという。耐震改修だけでは不十分だということだ。

 減災の視点からの危機管理として、手だての足し算、空間の足し算、人間の足し算、時間の足し算の4つの要素が重要と整理された。手だての足し算とは、ハード・ソフト・ヒューマンの各対策の融合を図ること。特にハード対策が基本というのは、都市整備が重要ということと通底する。また、ヒューマンウェアとして、昨年、大阪で発生したビデオ店の火事の話が面白かった。あのビデオ店は1階にあり、建築基準法的には二方向避難は不要でその点では違反建築物ではなかった。しかし、それは1階ならいざという時には屋外に逃げられるという仮定の法律。しかしあの建物では1階は完全に壁で、出入り口は1カ所しかなかった。これは設計者の倫理の問題だという指摘だ。

 また、空間の足し算では、まんじゅうのアンコとカワを例に、アンコがうまければカワも薄く済む。アンコ=小さな公共(コミュニティ空間)を整備することが重要という指摘。また時間の足し算では、最近大掃除をしなくなったことが住まいの維持管理・メンテナンス文化の喪失を招いているという指摘があり、家検制度の創設を提案された。

 もう一つ興味深い指摘は、都市の危機管理に関して。安全都市デザインガイドラインが必要じゃないか、というもの。これは建築基準法の集団規定のような仕様規定ではなく、都市計画の性能規定化を求める趣旨で、例として大阪の法善寺横町の安全性を確認した上での柔軟な集団規定の緩和等を上げられた。

 減災の視点からの危機管理(手だて、空間、人間、時間)、建築の危機管理(フロー、ストック、応急対応、復旧・復興)、都市の危機管理(フロー、ストック、応急対応、復興事業)ときれいに整理された構成の資料を配布しつつ、奔放に横道に逸れていくお話は、親しみやすく楽しい。しかも大きな構成のなかに埋め込まれた一つひとつの主張はどれも頷くに足る説得力があった。「ソフト対策に流れていませんか」という問い掛けは耳が痛い。これは国を挙げて姿勢を正し取り組んでいかなければならない課題であろう。