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フランスの景観を読む

 フランスの景観・都市計画制度を、全体的な思想から制度の詳細に至るまで、丁寧に説明し、非常にわかりやすい本である。景観・保存・規制という言葉がタイトルに並ぶが、フランスの都市計画制度全体がそれらの言葉で説明されうる体系となっている。それは建築・文化遺産・都市計画が一体的に文化省所管となっていることからも窺われる。  フランスの「建築に関する法律」第一条の引用から始まり、基本的なところで日本との考え方の違いを説明した上で、(1)歴史的建造物の保存、(2)通称「マルロー法」と言われる保全地区と修景事業の制度、(3)景観に重要な影響を及ぼす屋外広告物と看板に対する規制、(4)土地占有計画から地域都市計画(PLU)に移行した都市計画の各制度を概説し、さらにパリ市やディジョン市の実例を挙げて、各制度を懇切丁寧に説明していく。  全国4万件に上る歴史的建造物の周辺500mに建築規制がかかる保存制度やマルロー法に基づく詳細な規制もさることながら、筆者が特に驚きと賞賛を表すのが広告と看板の規制である。公共のポスター掲示板も一般の広告と同じ広告物として定義され、その啓示場所や規格が定められている。また壁面や突出し看板、地上立ちの広告、光を使用した看板・広告など、その形状により細かく立地と形状が定められており、またそれが当然と受け止められているところは、まさに文化の違いを感じざるを得ない。  都市計画についても同様。壁面交代や高さ規制が主で、建ぺい率、容積率はあまり重視されていないことは、日本のように規制の意味を忘れて数値を守ることだけが求められる社会から見るとうらやましい限りだ。日ごろから私自身も考えていたことであり、こうして実践されている国のことを紹介されるとうれしくもなり、また、うらやましい。  本書はフランスの景観・建築規制に関する本であるが、同時に日本の同様の制度を考える上でも、大いに参考になるものである。
●フランスの・・・「建築に関する法律」の第一条・・・「建築は文化の表現である。建築の創造、建設の質、これらを環境に調和させること、自然景観や都市景観あるいは文化遺産の尊重、これらは公益である」(P2)
●近代都市計画の意味を理解しようと思うなら、それが否定しようとした既存の歴史的な都市を理解する必要がある(P31)
●フランスにおける歴史的建造物の保存制度で画期的なのは、その周辺環境の保存である。1943年に歴史的建造物の周囲半径500mについて、あらゆる建設を規制する制度が導入された。(P39)
●フランスでは文化省が文化遺産とともに建築も担当するようになった。日本では、・・・今後も文化庁が建築を担当するようになることは考えられない。建築を学び、教える者としては、「建築は文化である」と認識され、文化庁が建築を担当する日がいつか来てほしいと思う。(P92)
●保全地区は、あくまで個別の文化遺産を中心として保存を行う制度であり、その結果、全体として歴史的な市街地が再現されるという論理に立脚している。したがって日本でよくいわれるような、景観や環境の保全が最初にあるのではない。・・・保全地区は都市にある文化遺産を一つひとつ保存あるいは修復することにより、歴史的市街地という大きな文化遺産を再生させる制度となっている。(P128)