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建築半丈記

 著者の永井規男氏は、関西大学の名誉教授にしてNPO法人古材文化の会(旧・古材バンクの会)理事長でもある建築史の先生である。本書も、先に読んだ吉田桂二氏の「家づくりの知恵」と同様、建築の先達によるお気楽なエッセイ集である。  建築史の学者らしく民家や町並に関する蘊蓄もあるが、そこから日常の暮らしや自身の楽しいエピソードに筆が走ることも多い。それもそのはず、本書は関西大学内の研究所ニュースに連載執筆してきたエッセイを大学の退官記念にまとめて出版したもので、読者も比較的身内を想定していたと思われる気楽さが軽く読みやすい感じに仕上がっている。何と言うことはない話の連続だが、肩の力を抜いて読み進めることができ、好ましい。
●昔は冬でも家中にはひとつの火鉢と炬燵だけというのが当たり前だったから、親が小言を言う機会をむざむざ与えることを承知のうえで、子供どもは親のいる火鉢のまわりに集まったものだ。・・・いまは一家団欒のないことが問題になっているが、この問題の解消はきわめて簡単、暖かいのは居間だけにしておけばよいである。(P009)
●家蓋付のカーテンで囲ったのを、われわれは豪華な寝床の見本のように思っているが、あれも実態は寒気防ぎの苦肉の策だった。われわれのご先祖様が蚊の侵入を防ぐ策として蚊帳を考案したのと同じ類いである。(P056)
●ダウン族(しゃがみこむ若者たち)は、ダウンすることで大人と違ったことをして見せているつもりだろうが、知らず知らずに先祖の伝統への回帰を見せてくれているわけだ。・・・こう考えると、茶髪にして日本人離れを気取っていても、じつはダウン族こそまさにアジア的伝統を引き継いでくれている貴重な種族だということになる。(P091)