あいちまちづくりシンポジウム「地域が担うまちづくり・まちおこし」

 毎年6月のまちづくり月間に合わせて、国交省中部地方整備局と愛知県、名古屋市等が共催してシンポジウムが開催されている。今年(6月10日)は、最近活発に活動している豊川稲荷門前のまちづくりについて聞けるというので、参加した。
 基調講演は「地域と大学が連携した創造-豊川稲荷門前のまちづくり」と題して、豊橋技術科学大学の松島准教授から。豊橋技術科学大・松島研究室では、地域内のまちづくり施設「いっぷく亭」の一角にサテライトラボを開設し、地域に入って研究活動を行っている。研究テーマは豊川稲荷表参道商店街の景観整備に関する研究で、地元のTMOである豊川開発ビル株式会社の事業支援を得て、社会実験として地域内の2店舗をモデルに景観整備(ファサード改修)を行い、効果測定等を経て、景観整備基準(案)の提案等を行っている。地域に溶け込んだ取り組みは賞賛に値するが、事業体制(案)の中に大学が位置づけられており、松島研究室としていつまでこうした活動に関わり続けられるのか、少し疑問に感じた。恒久的には不可能だが、当面5年程度といった時限付きであればもちろん十分可能にして、大学にとっても地域にとっても理想的な体制であり、今後が楽しみでもある。
 続いて行われたパネルディスカッションでは、松島先生をコーディネーターに、NPO法人小田原まちづくり応援団副理事長の平井太郎氏、株式会社豊川まちづくりそわか代表取締役の鈴木達也氏、昨年度まで中部地方整備局都市整備課長だった国土交通省総合政策局事業総括調整官室の田中調整官が並び、それぞれの活動等について報告が行われた。
 平井氏からは、昨年秋から始めた小田原まちあるき検定の意図、体制、内容と成果等が報告された。まちあるき検定は、まちあるきを行った後で、いわゆるご当地検定を行うもので、小田原マニアを今後のまちづくり活動に巻き込んでいこう、といった戦略も伺え、興味深い。平井氏自身は、大学院生(社会学専攻)時代に、小田原市が2000年に設立した小田原政策総合研究所に市民研究員という立場で参加し、その後大学で職を得て、学識者として関わり続けているという。こうした人が関わり続けているというのは、心強いし、活動もソフィスティケートされている。
 鈴木氏が代表を務める「株式会社豊川まちづくりそわか」は、豊川稲荷門前商店街で「いっぷく亭」というまちかど施設を開設し、喫茶・ギャラリー・物販等を手がける100%民間出資のまちづくり会社である。ここに至る経緯として5年間、月1回継続して実施している「いなり楽市」を中心に活動の紹介をいただいた。実行委員会の下に組織した4つの部会の長はいずれも20~30代の若手が務め、年上が支援する仕組みが元気の良さを生んでいるかなと思う。毎週1回、夜8時から3時近くまで、というのはなかなか続けられるものではない。ステージ上で繰り広げたチンドン屋のパフォーマンスは楽しかった。
 国交省の田中氏からは、「新たな公」といった話がメインだったが、現在の担当である観光まちづくりに関する話が興味深かった。「まちづくりから観光へ」という視点で、観光人口を日平均して定住人口に加えれば、まちづくりの大きな力となる、といった話。逆に「観光からまちづくりへ」という視点から、(1)日常の非日常化、(2)観光の多様化、(3)交流を求めるニーズ、といった動向を生かしたまちづくりと観光の連動といった話などが紹介された。
 コーディネートがイマイチということもあり、特定のテーマの掘り下げや全体での発展的な話題展開とはならなかった印象だが、各自の話はそれぞれ興味深いし、そうした情報が得られたことに意義があった。また機会を得て、それぞれの地域を歩いてみたいと思う。