季刊まちづくり18

 特集「コンパクトシティの戦略」。特別企画「移住・住み替え支援最前線」に惹かれて購入。  コンパクトシティ特集は、今話題の富山市、青森市に加え、山口市、小田原市の事例報告。さらに高松丸亀町のコミュニティ再投資会社の事例。巻頭は福川裕一先生による「中心市街地におけるまちづくり計画の作り方」で佐原市の事例を挙げて中心市街地活性化基本計画の本質について論評している。  移住・住み替え支援は、H&C財団の「住み替え支援活動ガイドブック」の作成に協力した(株)アルテップにより施策事例がわかりやすく整理されている。  しかし、いつもながらその他の地域レポートの方が面白い。真鶴町の職員による「第2回「美の基準」が生み出すもの」は現在の運用とその成果がみられて興味深い。地域探訪「地域の生き延びる『原則』を求めて」の青森県むつ市大畑町の「大畑原則」、地域レポート「大阪の長屋を活かしたまちづくり」、町並みインタビュー「笹原司朗|らしさを捨てろ―長浜の挑戦」などもそれぞれ興味深い。都市空間の構想力「個と全体」も実体験を思い起こし納得する。
●大畑は漁師が生存をかけて自然に立ち向かう場所である。同時に「喰う」ために周囲の自然環境を維持しなければならない場所でもある。「地域社会は地域資源がかれずに蓄えていることが喰うことの基本だ。(P18) ●プランが事業の絶対的前提ということではない。・・・必要なのは適切な「開発」である。その場合でも、開発には地域の合意、そしてそれを文書化したビジョンやプランが必要である。・・・つまり・・・町づくりには、つぎのふたつの柱が必要である・・・(1)合意形成のシステム (2)開発のシステム 前者を文書にまとめたものがプラン、後者がプログラムである。(P21) ●できれば少ない投資で効果の高い方法がいい。だから町並み保存で都心再生が成功するのである。(P60) ●「美の基準」がレビュー型の基準として、個別の敷地の具体的な特徴を元に、当事者による最適解を探っていく双方向型協議に基づき実現を図る基準であることが明確になった・・・窓口で声を荒げる者もいる。「誰がふさわしい色を決めるんだ!」。即答する。「あなたと我々、当事者です」。(P80) ●一つの箱に収まらない建築が都市を廊下として色付ける(P104)