すまい・まちづくりノート

コミュニティと都市の未来

タイトルを見て衝動買いしてしまったけど、吉原直樹って誰だっけ? 少しイヤな予感もしつつ、「いつか見たことがある」と思って調べてみると、「コミュニティを再考する」の筆者の一人だった。この本を読んだ時に、吉原氏の書いた章はかなり難解で、どこまで…

夢みる名古屋☆

ふわふわとしたタイトルで、流行のナゴヤ本かと思ってしまう。だが内容は強烈な都市開発批判だ。過激な超左翼と言ってもいいかもしれない。だが、読み進めると、名古屋・愛知県の戦前から戦後にかけての、今はほとんど語られることのない歴史が明らかにされ…

アナザーユートピア☆

「Another Utopia」と題する新建築に掲載された槙文彦の論文に呼応し、様々な分野の専門家が論文を寄せた。槙が提起したのは、「オープンスペース」にはもっと多くの可能性があるのではないか、専門領域を超えたディスカッションの対象とすべきではないかと…

地域をまわって考えたこと

小熊英二と言えば、自分の父親の半生を客観的に取材した「生きて帰って来た男」は面白く読んだ。歴史社会学者という肩書になっているが、現代社会に対してもそれなりの意見を述べる論客というイメージでいた。本書はそんな小熊氏が移住希望者向けの雑誌「TUR…

空き家を活かす

昨年の秋に発行され、購入して以来、長く書棚の上に積まれたままになっていた。松村秀一が「空き家を活かす」と書けば、内容は全国のリノベーション事例になるに決まっている。実際、本書では、和歌山市のリノベーションスクールに始まり、全部で8つの事例が…

熱海の奇跡☆

4月に筆者・市来広一郎氏の講演会「熱海のリノベーションまちづくり」に参加した。非常に啓発される講演会だった。次は本書を読もうと思っていたが、ようやく読み終えることができた。時間が空いたが、それもまたよかったのではないかと思っている。講演会だ…

団地と移民

安田浩一と言えば、「ネットと愛国」で有名になり、その後も右翼やヘイトスピーチなどを取り上げたルポルタージュが多いライターだ。本書では団地に住む移民を中心に、差別やヘイトの問題を取り上げているのかと思って読み始めたが、思った以上にまともに現…

家の文化学

「家」という言葉から当然のように家屋としての「家」だと思って読み始めたが、そればかりではなくて「イエ」制度のことでもある。本書に寄稿している執筆者は、アメリカ文学、日本古典文学、古筆学、古典芸能、日本近世文学、民俗学、女性論、社会学、そし…

ひとり空間の都市論

「都市」を「ひとり空間」という視点から見る・考察する、というのは面白い視点だ。筆者は都市・建築論を専門とする社会学者。建築職の立場からすると、都市にしろ、住宅や商業施設などの建物にしろ、既に「ひとり空間」という視点からの様々な取組や考察が…

奇跡の集落☆

新潟県十日町市池谷集落と言えば、地域おこし協力隊の活動の中では最も有名な取組の一つのようだ。6世帯13名という廃村寸前の状態から11世帯23名まで盛り返し、限界集落から脱却していく過程を詳しく紹介している。筆者は、この集落に地域おこし協力隊として…

限界都市 あなたの街が蝕まれる☆

日経新聞で2018年3月から連載されてきた「限界都市」シリーズを加筆修正して発行されたのが本書だ。日経といえば企業寄りのスタンスだと思うが、本書ではそんな企業の利益追求活動による弊害をあからさまに描き出す。それだけ都市における矛盾、問題が深刻に…

西洋の都市と日本の都市 どこが違うのか

昨年、「西洋都市社会史」を読んで、本書を読んでみたくなった。「西洋都市社会史」が、タイトルに似合わず、ヨーロッパ各国都市の訪問記だったのに対して、本書は「比較都市史入門」という副題がついているように、ハンザ都市を中心とする西洋都市史を教科…

地方都市の持続可能性

本書の最終盤、第5章に突然「この先例として学ぶべきは東京の多摩ニュータウンや愛知の高蔵寺ニュータウンなどだろう」(P249)と書かれていてびっくりした。でもその後は多摩ニュータウンの高齢化や施設の老朽化を指摘するのみで、高蔵寺ニュータウンについて…

ベルリン・都市・未来☆

「アーティストやハッカー、DJ、ネオ・ヒッピーたちは、いかにベルリンの再生とソーシャル・イノベーションを引き起こしたのか? 近年、スタートアップ都市として注目を集めるベルリンを、「創発」という観点から描く。」 図書館の内容説明に、上記のように…

老いた家 衰えぬ街☆

前著「老いる家、崩れる街」は、既に進行しつつある空き家・空き地の大量発生に対して、都市計画的見地から問題点を指摘し、方策を提案したものだった。本書では、大量の「空き家予備軍」に焦点を当て、「問題先送り空き家」の実態と問題点を指摘する。特に…

つくられた桂離宮神話

「京都ぎらい」以降、井上章一はすっかり有名になった。TVの歴史番組でもちょくちょく見かける。自らの著作に加え、歴史学者である本郷和人との対談本「日本史のミカタ」も出版している。先日、友人から「外国人が見た日本」(中公新書)に「桂離宮とタウト…

モダニズム崩壊後の建築

先に読んだ「ル・コルビュジエがめざしたもの」の続編。本書では副題「1968年以降の転回と思想」にもあるとおり、1968年以降の現代建築に対する批評などを収録している。本文中にもあるが、現代建築と近代建築の境はどこになるのか。筆者は前書で近代建築、…

今年読んだ「すまい・まちづくり本」ベスト5

今年は都市・建築関係の本を18冊読んだ。例年よりは多め。その中からベスト5を選定してみた。都市の縮退や空き地・空き家等に係る本が多いのが今年の特徴。一般のメディアなどで取り上げられることも多くなってきた。 【第1位】都市をたたむ(饗庭伸 花伝社)…

世界の空き家対策

このところ、米山秀隆氏の空き家対策に関する本を続けて読んできた。日本の空き家問題とその対策を考える一方で、海外ではどうなっているのか、という疑問を持っていたが、さすが米山氏、しっかりと海外事例についても調査し、まとめられている。本書では米…

捨てられる土地と家☆

先に「縮小まちづくり」を読んだが、ほぼ同じ内容を、空き家・空き地の増加という観点から書いたのが本書。第1章「空き家・所有者不明土地の実態」から始まって、第2章「現状の対策」、第3章と第4章で「より根本的な対策①・②」、そして第5章はまとめとしての…

幸せな名建築たち☆

(一社)日本建築学会が編著となっている。会報「建築雑誌」に連載されていた41の住宅・建築物に「聴竹居」を加え、42の住宅・建築物の居住者・所有者・管理者に対するインタビューをまとめたもの。会誌編集委員会の下に、『幸せな名建築たち』小委員会が設置…

ル・コルビュジエがめざしたもの

ル・コルビュジエ論かと思って読み始めたら間違う。あとがきで書いているとおり、モダニズム建築に関連して書かれた多くの論考などを集めたものである。本書に続いて、ポストモダン以降の建築を論じた現代編もすぐに刊行される予定という。いや、もう発行さ…

ほっとかない郊外

泉北ニュータウンで興味深い活動が行われているという話はこれまで何度も聞いてきた。この4月には都市住宅学会中部支部により、NPO法人すまいるセンターの西上代表理事による講演会が開催されたが、都合により出席できなかった。本書は昨年10月に発行された…

日本の醜さについて

井上章一を私は建築史家と思っている。「京都ぎらい」でブレイクして以降、本人は自分のことをどう考えているのだろう。本書は「小説幻冬」という文藝詩で連載した「結局、日本人とは何なのか?」を改題し加筆修正したものと書かれている。「あとがき」では…

藤森照信の建築探偵放浪記☆

○50年近く建築探偵業を続けていると、自分の関心の傾向が分かってくる。まず、その建築が作られた社会的、文化的、宗教的、歴史的背景への強い関心がある。作った人への興味も深い。/一方、そこに使われている素材、例えば泥とか石とかコンクリートとか、そ…

「都市の正義」が地方を壊す☆

○日本社会の人口減少は、地方のみならず首都圏を含めた国民全体の課題である。そして東京一極集中はこの国の構造そのものだから、首都・東京こそがこの問題の中心的な当事者であるはずだ。/にもかかわらず、国民の多くがこの地方創生をまるで対岸の火事のよ…

縮小まちづくり

米山秀隆と言えば、空き家問題の専門家というイメージがあるが、本書では空き家問題の前提となる都市の縮小・地域の縮小をテーマに、第1章・第2章ではエリアマネジメントやコンパクトシティ政策でいかに都市を縮小していくかを考え、第3章・第4章では縮小す…

地元経済を創りなおす

知人から勧められて読了。地域のお金は地域で回すようにしましょう、というのは、藻谷浩介が「里山資本主義」で述べていたことと同じ。これに、「漏れバケツ理論」や市町村単位の産業連関表、地域経済分析システム、地域内乗数効果とLM3などの理論やツールを…

西洋都市社会史

「西洋都市社会史」という堅いタイトルだが、内容はヨーロッパ、特に北ドイツを中心とした各都市の訪問記である。筆者は中世ハンザ都市の都市史を研究する経済学者。筆者が勤務する中央大学の雑誌「中央評論」に掲載してきたエッセイを中心に、全20章にまと…

次の震災について本当のことを話してみよう

福和先生とは地元で昔から何かとお付き合いがある。講演会でいじられることもあれば、飲み会で同席したこともあった。本書には日頃から色々な機会に聞いてきた話がほとんど網羅的に書かれている。その点では内容的に特に驚くこともない。 第2章の冒頭で、阪…